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第18回世界文化賞受賞:マイヤ・プリセツカヤ

リンク: 第18回 世界文化賞演劇・映像部門 ・進化する80歳「闘う白鳥」.

マイヤ・プリセツカヤ 1925年11月20日、露モスクワ生まれ、80歳 ドイツ南部ミュンヘン中心部にあるバレエスタジオ。
その鏡の前でポーズをとり、質問にこたえる身のこなしは、気品が漂い、不思議な魅力にあふれていた。 とても80歳を超えた人のものとは思えない。
その力はいったいどこからくるのですか。そう尋ねると、両手を頭上に掲げて「天からよ」とおどけてみせた。
モスクワの芸術一家に生まれ、8歳でボリショイ・バレエ学校に入ったが、12歳のとき、独裁者スターリンの大粛清で、父親を「人民の敵」として銃殺され、その翌年に母親も逮捕、8年の流刑に処された。それそれでも、叔母宅から学校に通い、最優秀で卒業。独ソ戦の最中からボリショイ劇場のソリストとなり、その美貌(びぼう)と高度の技巧、芸術性を買われて瞬く間に劇場の人気プリマとなった。だが、舞台芸術の可能性追求は止まらない。


現役最高齢のバレリーナ、マイヤ・プリンセツカヤのインタビューが現在(9/20)産経新聞に連載中だ。 彼女の著書「闘う白鳥」を入手できなかった私には彼女を知ることのできるよい機会となっている。 

Ballet_bishin 今年2月に「バレエの美神」(2006)に足を運んだ。
80歳を超えてなお現役というそのプリマドンナの姿を観ておきたかった。
その年齢で踊り続けている人とはどんな人なのかと。

それよりちょっとだけ前に、前回2003年の「バレエの美神」をTV(再々放送)にて見る機会を得た。 「牧神の午後」のニンフを踊り、カーテンコールに出てきた彼女は気位が高そうな近寄りがたい鋭いオーラを自ら放つ女王様のような雰囲気があった。 牧神でのニンフが演ずるポーズのひとつひとつは後輩のバレリーナにはひけをとらないほどに決まっていた(「牧神の午後」という作品はエジプシャンダンスのような体には不自然な姿勢をとって動くというのがポイントのひとつ。飛んだり跳ねたりの振付がない。)。 なにより作品への理解は誰よりも深いはずなのだから技術では勝る後輩たちでも敵わないだろう。

そうして実際この冬、彼女が紅白の扇を持って踊る「アヴェ・マリア」見た。
鍛えられた身体、鍛え抜かれた精神。
80歳なら、いや、普通のバレリーナやダンサーなら決して履かないようなハイヒールを身に付け、彼女は踊っていた。
モーリス・ベジャールが彼女の為に振付けたという「アヴェ・マリア」。
若さがもたらす物すべてを超えた後も舞台に立ち続ける彼女の姿は存在するだけで賞賛に値する。 
扇をひらひらと動かす彼女の後姿は必見だった。 
しなやかな肩甲骨の動きは、かつて彼女が人生でもっとも多く踊った「瀕死の白鳥」がどんな風であったかが容易に想像できる。 やはり現役なのだ、彼女は。
ベジャールが細心の注意と最大の敬意を払って彼女の為に振付けたことがうかがえる。
やがて彼女は拍手の中、続けてアンコールとしてもう一度踊った。
踊っている時も、カーテンコールに出てきた時も、前回の美神の時の印象とはまったく異なり、今年のプリンセツカヤはどこか童女のような可愛らしさを携えていた。 まるで舞台の上にいるだけで嬉しそうに見えたのだ。

あの短い作品の冒頭で前に出てくる時に踏む小刻みのステップ、ハイヒールで立っていること、観客席のエネルギーを受け止めること...若い年齢の人には当たり前のような仕草すべてが、実は膨大な労力をもって示されている。
その事実にこの若者の文化がもてはやされる日本という国の人達はどれくらい本当の拍手を送っているのだろう。 二度も踊らなくてもいいのに、とか、(若い現役の踊りを見にきたのだから)いまさら、、、とか、そんな感想もネットでは目についた。
またはあの年齢ですごいわね、という熟年層の感想もどこか他人事風。

想像してみてほしい...
自分が70、80歳になった時に、彼女のような姿勢で生きていられるであろうか、と。
肉体や精神を維持してそして更に進化し続ける為に今、若いワタシはいったい何をしているだろうか、と。 
若者と年長者をリアルタイムで比べることはできない。
できるのは、If...という未来へのイマジネーションからの創造だ。
If...という過去への思い返しではない。

見えない部分は見える部分よりも膨大だ。

世界でもトップ中のトップのバレリーナの彼女は、彼女の人生においてもやはりプロフェッショナルだったのだ、と連載されているインタビューを読みながら改めて感慨に耽っている私である。

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