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夏の名残り:蚊取り線香

夏の盛りも大分過ぎた。
陽の傾きが大きくなり、一週間前からは熱帯夜をぬって虫の声が聞こえる。
立秋を迎えれば、人間の感じる気候とは別に自然はしっかり生命の時計を刻む。
もう、秋なのだ。

Katori01_3この夏の終わりに、少し安価になった除虫菊の蚊取り線香を買うことにした。
丁度小さいサイズも並んでいたりして、このタイプの蚊取り線香を買うのが初めての私にはうってつけだ。
久しぶりの蚊取り線香。

夏の初めを告げる香りのひとつに蚊取り線香の匂いがある。
どこの家からともなく夕刻になると流れてくるその香りは、懐かしい安堵感を運んでくる。
コンクリートのひしめき合う合理的な毎日の生活の隙間に夏の夕暮れが運ぶその香りは、まだ人がのんびりと季節と折り合って暮らしていた遠い日を思い出させるからかもしれない。

蚊取り線香の香りと緑色の重たい蚊帳、そして団扇。
私の住む木造平屋の家は庭に面して縁側があり、その庭には1本のとても大きな柿の木があった。 私が子供の頃はどこにでもあったごく普通の日本の生活様式だ。

都内に3週間ぶりのしっかりした雨が降った日。
若干涼しい外気が窓を通りぬけてくる夕方、線香をつけてみる。

Katori02付属品の線香立てを型から起こし、火をつけた線香を穴にあわせて台に置く。
ふと、この線香立てのシンプルな形状に目が留まった。
蟹の爪の様にふたつに分かれた線香立ての先っちょ。 
そうだ、確かその爪の間には刺す穴の部分が無い折れて短くなった線香を挟んで使うことができたはずだ。 または短時間燃やすのを目的にちょっぴり端を折って使う線香の為にその蟹の爪先はあった。
一枚の小さい板の中に考え抜かれた機能がちゃんと入っている。
このデザインは蚊取り線香と共に何十年もの間、何気に使われ続けてきたのだ。 
今また改めて感心する。
小さな中に丁寧で美しい機能性を備えた品物。
日本...です。

防虫というよりは香の趣が強いこの蚊取り線香の匂い。
知らない誰かに届くことはあるのだろうか...
闇が濃くなる夕刻の風に乗って、香りはゆっくりとどこへともなく消えていった。

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