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2006-01-16

ベガーズ・オペラ (1-1)

beggers_p01 日生劇場って、古いけれど好きな劇場です。 
なんだろう、あの感覚は。 
入ると同時に毎回どどーっと感激が襲ってくるのです。 
ああ、この劇場が好き♥...というような溢れ出る感覚。
この劇場にはオペラ座の怪人ならぬ、日生のエンジェルでも住んでいるのでは?
そのうちに突き止めよう、私。 

本題...日本初演の「ベガーズ・オペラ」。 
まだ1度しか観ていないけれど、洗練された遊び心が印象に残る。
上演時間が長いというけれど、歌舞伎など見に行った暁には朝11時開演で終わるのは午後3時過ぎ。 今年上演されているオペラ「ニーベルングの指輪」などは全幕一挙上演なので、作品全幕を見るには数日かかる、という壮大さ。

ジャンル違いではあるので単純には比べられないが、とにかくお芝居って見るのに体力も時間も必要。 1時間程度の能の作品でも大枚はたいて居眠りしている人はやっぱりいる。 だからこの作品の上演時間が長くない、とは言わないけれどもしも再演があったとしても、やたらめったら短縮はして欲しくないかも。

観劇って晴れの日だったろうと思う。
いまや私も気軽に出かけているが。
このお芝居は(「ベガーズ・オペラ」はミュージカルというよりもやはり芝居として見るのがいいかと...)、18世紀英国の貧しい人々が一夜限りの舞台を行なうという設定だ。 
まさに彼らにとって一生に一度の「晴れ舞台」。 
その噂を聞きつけてやはり見に出かける街の人(観客)という気持ちで見たらいいのでしょうね。 
初演の作品っていつもこんな感じなのだろうか?  客席に居る人たちがすごく期待をもってワクワクと成り行きを見守っている興奮が伝わってきた。 (追記:別の初演作品も見ているけれど、やっぱり違うみたいだわ。 やはりジョン・ケーアードの演出と原作が有名だからかナ。)
そうかぁ...と実は自分も初演に立ち会えてちょっと嬉しくなっていたりしていたみたいだ♪
劇場狭しと出演者が客席を動きまわったり話かけてきたり。 
今回直接のアプローチはなかったが、見ているだけでも面白かった。 
こういう演出を参加型というらしく、近頃流行っているらしい。 
でもあんまり緊張しなかったのは劇場の空気があまりにも上手くベガー達の世界にワープしていたからだろう。 そしてあの舞台美術はすごい。 品良く美しかった。 ライティングもちょっとミスティな感じで「レ・ミゼラブル」と同じ演出家の作品ではありながらもまったく違う世界が広がっていた。

これをミュージカルと呼んでいいのかどうかは宣伝する側に任せたい。
人に自然に備わっている本能の中に歌うことと踊ること、というのがある。
人は嬉しい時はひとりでに歌を口づさみ、恋をしたら踊り出したくなるだろう。 
またその逆もあり。
そのように自然に芝居に折り込まれる歌が心地ちよかった。 
出演者が演出にのって皆違和感なく演じ、歌うことができるというレベルの高さ。 
しかも劇中劇の為に出演者が「本人」→「ベガー」→「ベガーが演じる役」という風にいく層にも役柄を身につけることをしいられるわけだから気を抜く暇がないだろう。
最初の観劇をした日は一幕が上がってわりとすぐに高嶋兄が、劇後半の方ではうっちーが台詞を噛んでいたけれど、はっきり気がついたのはその2回だけ。 
うっちーはちょびっと歌声が裏返っていたところがあった。 なんとなく精彩に欠けていたような気がしたのは気のせいか?
二幕目の前半を占める女たらしのマークヒースの姿を眺めつつ、集中力の途切れた私だ。 
ちょっと中だるみの二幕前半だったが(ここはうっちーファンには美味しい時間)、後半はマークヒースを巡る二人の女の対決でがぜん面白くなる。 最後に二人が掛け合いで歌う曲が今回の作品では一番心に残った。  
マークヒースを奪い合う笹本、島田の両人がこれまた上手いのです。 
今年20歳になったばかりの笹本玲奈。 若さで威勢のよい娘ポーリーはまさに彼女にうってつけ。 この役はどこぞの言葉を借りるなら、賞味期限付きですね。 
高嶋、村井の業突張りな役人対決も見物。 
そうして舞台上でいつも静かにたたずむ脚本家フィルチ役の橋本さとし。 舞台の雰囲気を完全に征してました。 素敵♪  

begger_timetable観劇後Wowowで放映された番宣のインタビュー映像を見たのだけれど、橋本さん、大阪弁で全然印象の違う人でした。 最初に客席に乱入するのでロビー、扉前に集合していたベガーの中に姿を見かけたときは、もうすでにトムだった。(つまり私はこの日開演時間に遅れてしまったのだ ^^;) やはり役者やのぉ~。 そういえば側にはトムに惚れているエリザベスのくりくりした大きな瞳もあったかも。(と今思い出す。)

別のインタビュー番組では演出家のジョン・ケアードが話しているのをしっかり見たが、この人、この日本での公演すごく楽しそう。 見るからに柔らか頭で創造性に満ちているという感じ。 たぶんパンフにも書いてあったが、彼にとっては日本で上演することで外すことのできる枠のようなものがあって、(例えば英語の古語を使う必要がない、とか...)そのあたりの試みなども演出家の彼自身が楽しみなのが伝わってきた。 いい意味で日本のバイブレーションに合っているかもしれない。 見ていてすごくエネルギーが洗練されている人なので驚いた。

今回はちょっといい部分だけ集中して書いてみました。
確かに「長い」し、飽きた部分はありです。 
回を重ねたら文句もでるやもしれませんが、初回はなかなかいい感触で楽しめました。 
観客の年齢層がかなり高いお客様が目立った回だけれど、皆すごく楽しんでいた様子。 ちりばめられた風刺の台詞に笑いがたくさん起きてました。  

(この回つづく... *敬称略)

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コメント

よかった、うまくTBできました~。それでは1-2のアップをお待ちしてます。こちらもTB返しよろしくねm(_ _)m

投稿: ぴかちゅう | 2006-01-17 21:19

私も新旧エポニーヌ対決と橋本さとしに魅せられました。確かに長くて、ちょっとエリザ同様、村井パパのあたりで眠くなってしまったのですが、会場の熱気やら、役者さんたちが
本当に楽しんでやっているというのが
ひしひしと伝わってくる舞台でした。
今となっては歌を1曲も覚えていないのが残念です。

投稿: ヤギ | 2006-01-17 23:56

私、最近村井パパのおやじなマニアックぶりにはまりつつあります^^;
橋本さん、何か崇高な存在感をベガーの中で振りまいていましたね♪ 
ケーアード氏がいうようにPlayが遊びになる余裕が人生にもたくさんあったらいいのにね。 
私はまだまだ現実はPlayであることを忘れている毎日です。

TB大歓迎です♪ 
いただいた方>ありがとうござます。

投稿: ♪~ | 2006-01-18 16:07

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