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2006-07-30

『アンデルセン・プロジェクト/ルパージュ版』

06628aproject_p6月の末に世田谷パブリックシアターでアフター・トークショー付で観た作品。
2005年ハンス・クリスチャン・アンデルセンの生誕200年を記念して立ち上げられたアンデルセン・プロジェクトの一環。
こんなにすごい舞台を、このお値段で(A席5800円)観る事ができていいのでしょうか。

今回は制作、演出、主演の一人芝居を行うルパージュ版と日本版として白井晃主演の2つのバージョンが公演。

以前なら見比べていたかもしれない二つの公演を今回はルパージュ版のみに絞って観劇。
それぞれの登場人物の存在と彼らの抱える悩みや問題が絡み合い、ひとつの物語を作り上げる。 ルパージュのクリエティビティに驚愕。  
移民系の青年がラップのリズムにのって壁にスプレーで落書きをしていくLEDのスクリーン。 綴られるタイトルロールの巧みさは舞台というよりはすでに映画並の視覚効果。 映像と光を組み合わせた「ルパージュ・マジック」と呼ばれる演出は、シンプルでかつ複雑。 並んだ電話ボックスは時にいかがわしいビデオを見る覗き部屋へと変わり、筒状の柱は公園の木々に、旅の荷物は列車へと、舞台はめまぐるしくその姿を変える。

トークショーでルパージュが自分の役をどのように作っていくのか、という問いへの答えはもう日本人の水準では追いつかないほどに成熟していました。 それは社会の成熟度にも関係するのでしょう。
主題も政治的な絡みが含まれた現在のカナダ(ケベック州)の置かれている立場を投影しつつ、また深く、ふか~~く、アンデルセンという童話で知られる人物の個人の陰もえぐりつつ、構成されていました。 

主人公はパリ・オペラ座に招聘されたカナダ人。 アンデルセンの書いた童話をオペラにする脚本家という設定。 成功を夢見ながらパリに出てきた彼はパリに住む友人と期間限定で住居の交換をする。 その住居は繁華街のいかがわしい店が一階にあるビルだった。 
モロッコ系の青年は毎日覗き部屋の欲情の後始末という掃除をしながら時折闇に紛れて公共の場にメッセージをペイントしながら生きていた。 パリの底辺にいる人間である。
片やオペラ座のディレクターは表向きの成功とは逆に家庭不和と精神不安に脅かされてくたびれ果てていた。 
アンデルセンが実は子供を好まない、そして都会へのコンプレックスに満ち満ちた男で、好きな女性へも正直にアプローチできない(生涯純潔!)卑屈な人間であったことを真正面から描くことで、登場人物が持つそれぞれの世界がひとつの流れとして結ばれていく。

一人芝居ということで、移民系の青年、オペラ座に招かれた作曲家、アンデルセン、童話の主人公・木の精アドリアネ、オペラ座のディレクターと数人を演じ分けるルパージュの早代わり。 様式美とはまったく異なる内面の深い変容からやってくる。 早代わりというよりもまさに”変身”そのもの。 
柱一本の陰に入り出てくるときはまったく別人。
早代わりのプロセスさえ垣間見ることのできないほどに精妙な仕掛け。
それは舞台に非常に近い客席からでもまったく見ることはできなかった。
瞬時に違う人間として現れる役者・ルパージュ。
日本版を観たいという気は微塵も湧かなかった。
ルパージュ自身は他の役者が自分の創作した作品を演じることで、作品に新たな解釈が加わり幅が広がるので好ましいといっていたが、オリジナル自体の幅の広さと許容の深さには舌を巻く。 
この芝居は痛烈な社会批判と自己批判も含めて自己の在り方をも見つめたものだ。 
そのもともとの自己の在り方が文化背景などによってまったく違うのだから、日本人は真似はできてもオリジナルが持つ内面の精妙さにはなかなか理解が追いつかないであろう事が見る前から目に見えてしまうのだ。
ルパージュの七変化は鬘や服装、言語の訛り、などを使いながら、女性に見立てたマネキンに息を吹き込み、見えない犬の散歩に翻弄され、踊り、悩み、怒り、絶望する。 
そしてアフタートークショーに出てきたルパージュ氏はこれまた舞台のキャラクターの誰でもない人でした。 
う~ん、すごすぎる。
ラスベガスのショーを演出したり、オペラ座の新作や半日以上にもおよぶ長い芝居を書いたり、と多忙かつ多彩。 演劇界の誰もが注目する人の立体的、かつ多角的な一人芝居でした。 

2006/6/28 @世田谷パブリックシアター

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[評]アンデルセン ・プロジェクト(世田谷パブリックシアター)YOMIURI ONLINE - 2006/7/5

■世田谷パブリックシアター/アンデルセンプロジェクト:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/06-2-4-5.html

【作・演出・出演】ロベール・ルパージュ
【上演時間】19:00-21:05 休憩なし

アンデルセン―ある語り手の生涯
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コメント

こんな身近にルパージュ版をご覧になった方が居ました♪
感想をドキドキしながら拝見しました。
で、観れなかった悔しさを改めてシミジミ噛み締めています。
(><)
白井版の感想をアップしていましたので、トラバさせていただきます。

投稿: midori | 2006-08-07 14:45

TBとコメントありがとうございます>midoriさん
構成自体が恐ろしく高度で密度の高い作品でしたね。
ルパージュの後を引き継ぎ公演した白井さんも大変だったのでは。
ルパージュ氏、人間の深層心理をよくご存知。
今回はアンデルセンという人物に絡めてどの役も自分の一部を外側に投影したものをもう一度演じる、ということで、自身の内面の深さをさらりと役を借りて表現してしまうところが一番すごい部分でした。

投稿: ♪~ | 2006-08-11 03:27

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» 「アンデルセン・プロジェクト」白井晃 版 [好きなことは止められない♪]
上演が報じられた当初から、注目は、してました。ところが、ウッカリしていてルパージュ版は見逃しちゃいました!危うく、白井版も見逃すとこでした! ギリギリセーフ、期せずして大楽!7月8日を観ました... [続きを読む]

受信: 2006-08-08 10:49

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