『ALL SHOOK UP』
交差する恋の人間関係と曲を使ったノリの良い展開で、約3時間があっという間。
たまには単純に明るくハッピーな作品もいいなぁ、と久しぶりに思う。
もっとも、この作品がチープでないのは出演者が芸達者だからでしょう。
諏訪マリー、尾藤イサオ、青山明、伊藤弘美、とミュージカルでお馴染みの面々が脇をしっかり固めてます。 このキャスティングと構成のよさに唄も踊りもお芝居も、しっかり味わえて、すごく得した気分。
主役のチャド役、坂本昌行のいつも真っ白い歯を覗かせてスマイルをたたえたスカした雰囲気にまず笑い転げた私。 アイドルがアイドル役やっているという構図が妙にツボにハマってしまった。微妙に周囲から浮いているチャドが後半、美術館員のサンドラに簡単に振られてしまってさらに浮きまくる。 腰を振りながら歯の浮くような言葉とちょっと不良なところが魅力のはずのチャドが、ただのお馬鹿さんに見えてくるところで、またまた大笑い。
噛み合わない恋の歯車は町の人たちを巻き込んで、あっちでもこっちでもすれ違う恋心。
お堅い女町長の息子と黒人の女の子との恋、不器用な青年デニスのナタリーへの片思いなど若者の恋のシーンもいいのだけれど、実は周囲の大人たちにも波及していく恋の行方が熟した演技と共にハートにきちゃいます。
女町長役は『東宝エリザベート』の娼婦の館では鞭を振りながらボンテージファッションに身を包んでいる伊藤弘美。 マダム・ヴォルフ以外は初めて台詞がある役拝見。独断と偏見に固まったおばさん町長をものすごくパワフルに演じてました。 この町長にも最後に大どんでん返しがあるのがこれまた可愛いのだわ。とっても魅力的な女優さんですね。
息子役は、、、というと、これまたどこかで見た顔。
しかしすぐに思い出せない。 誰だっけ、誰だっけ...『レミゼ』に出ていたよね。 え?原田君なの? ということで、若手実力派の彼はすっかりオールディズ(ここでは50、60年代)の服に身を包み、士官学校を意識した超ショートカットであまりに地味すぎ、途中まで誰だかわからなかった(汗)。 まっすぐな彼にはこの役はぴったんこ。
ママの手を振り切って尾藤桃子演じる黒人の女の子(ロレイン)と恋に落ちて、彼女にリードされながら駆け落ちすることまで決めてしまう。
初めての親子共演となる尾藤桃子が、黒人の高校生役が違和感なくぴたっとはまっていて、これまた上手いんです。 尾藤パパのほうはもう言わずもがな。きっと若かったらチャドの役を演じたかったに違いないバリバリのロカビリー歌手です。地味に整備工の姿に身を包んで役になりきりのオヤジ風の振りで踊らせておくのがもったいないくらい。
役なりきり、といえばもう一人...
舞台冒頭から最後まで笑わせてくれました、デニス役の岡田浩暉。
ほんといい役もらったよねぇ。 素顔がまったくわからないくらいの変貌です。
たれ眉、チリチリ頭、ダサダサの内気で内股な白人青年(しかも高校生!)役。ほっぺもちょっと赤味がはいっていてよけいに田舎っぽさをかもしだしています。このデニスのナタリーへの恋心からこの舞台は始まります。
ナタリーは町に現れた流れ者チャドにメロメロ。つなぎを脱いでドレスを着るようになりますが、チャドは学芸員のサンドラのお尻を追いかけまくりナタリーなど眼中になく。ここでナタリーは恋人になれないなら間近にいるだけでも、とチャドの相棒になる為に男装してエドに変身。可愛そうなのはチャドの相棒の座を泣く泣く恋する人に譲るデニス。ほんとダサくていい奴なのだ(しかしいい奴は単にいい奴で...)。
大女のサンドラとおチビのナタリーの凸凹コンビは立っているだけでも笑える構図。普段大味に感じる宝塚ブランドがここではストレートなコメディの味付けで、嫌味なく笑えます。
ナタリー役の花影アリスは現役の宝ジェンヌだそうですが、声がちょっと千秋っぽい鼻にかかった特徴のある声。ちょっとオモチャっぽくもあるんだけれど、コメディーだから逆にこれでいいのかもね。
最後の最後まで台詞がない保安官役の青山明。
なんと贅沢な使い方! まだこれから観るファンの方はお楽しみに。
『ALL SHOOK UP』はアメリカンコメディーなのだけれど、複線の張り方はシェイクスピアを土台にしているそうな。 『十二夜』を元に、、、とウィキペディアには書いてあったけれど、どちらかというと男装のエドの登場でますますこんがらかる展開は『お気に召すまま』か。 夜の遊園地に駆け落ちするまで隠れたカップルをはじめ、登場人物が終結するのは『夏の夜の夢』風。最後の大ウエディングの雰囲気も同じく。 ロレインとディーンはちょっとだけ『ロミオ&ジュリエット』???
そして恋の橋渡しとなるシェイクスピアのソネット17番、もとい18番♥ はシェイクスピアのソネットでも一番有名な一遍。
時代背景を考えると、酒場の女主人シルビアは黒人で、その恋の行方も小さな田舎町なら大胆な結末。 ロレインと恋に落ちたデニスの出生の秘密はもっと衝撃的...なのだが、現代となってはこれも軽やかなラブコメディに変身というアメリカンスタイル。
混沌とした人種や格差社会の問題を抱えるシビアな大国アメリカだが、どこか常に明るさを宿しているいるのも事実。
社会問題をしっかり取り入れた『ヘアスプレー』のような重量感ある作品もいいけれど、過去を消化して軽くみせてくれる『ALL SHOOK UP』のような作品もこれまたよし。
お腹の底から笑えて、私にとってはちょっと堅い頭が緩んだかも。
帰宅後しばらくはデニス踊りしてましたし♪
2007/12/14@青山劇場 マチネ
■シアターガイド記者会見:ミュージカル『ALL SHOOK UP』製作発表
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オリジナルBW版(視聴あり)と作中に使われた多くのエルビスの曲が聴ける一枚。
エルビスの「Rock'n Roll」アルバムはHMVから視聴できます→★
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『ALL SHOOK UP』 2007/12/08-21 青山劇場
【演出・振付】デビッド・スワン【脚本】ジョー・ディピエトロ【編曲】スティーヴン・オルムス
【出演】坂本昌行;チャド/花影アリス:ナタリー/湖月わたる:サンドラ/岡田浩暉:デニス/ 諏訪マリー:シルビア/尾藤イサオ:ジム/青山 明:保安官/原田優一:ディーン/伊東弘美:町長/尾藤桃子:ロレイン ほか
1955年代のとある閉鎖的なアメリカの田舎町。少女ナタリー(花影アリス)は、修理工場の一人娘として育ち平凡な日々を過ごしている。彼女は、いつの日か自分をこの町から連れ出してくれる素敵な人がバイクに乗って現れることを夢見ていた。
ある日、革ジャンにギターを持ったチャド(坂本昌行)がバイクに乗ってやってくる。彼はバイクの調子が悪く、ナタリーの住む町に寄ったのだが、ナタリーはひと目ぼれする。ところが、チャドが気に入ったのは、移動美術館で働く大人の雰囲気を持った女性サンドラ(湖月わたる)だった。ナタリーの父も彼女にひと目ぼれしていた。
そこでナタリーは男装して、エドと名乗り、チャドが自分をどう思っているか試してみるが、どうも反応がよくない。そこであの手この手でいかにナタリーが良いか吹き込むことに。そんなエドをよりにもよってサンドラが恋してしまう。
そんな中、チャドはギターでロックを奏で、閉鎖的だった町の雰囲気が変わってくる。しかし、ロックを禁じている堅物の女性市長は「町の風紀を乱す」とチャドを目をつけていた。
次第に町の人気者になるチャド、なんとか振り向いてもらいたいナタリー。ナタリーの男装姿に惚れているサンドラ、そして、ナタリーが好きな青年デニス… 果たして、あちらこちらで芽生えた恋とチャドの運命は!?
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