『ベガーズ・オペラ』 再演2008(2回目)
やっと日生に戻ってきた『ベガーズ・オペラ』の再演を観てから早1週間後... 私の足は再び日生へ。
もちろん新ピーチャムと新フィルチの登場を見届ける為♪
先の高嶋ピーチヤムが黒蜥蜴を探しに旅に出てしまったのでトムがピーチャムも演じることに。
今回は一階席の割合前方にて観劇(張り込みました)
臨場感が目の前の一階席もいいけれど先日座ったB席もなかなか良かったな、と再確認。
セットの階層が高いのと舞台脇のバルコニーになっている部分が丁度B席からよく見えるので、全体を見回す広角作用大なのだわ。 休憩時間のベガーズの客席訪問も意外や意外、最上階での動きがかなり活発。 歴史豆知識なども披露してくれるベンとマットのナイス・コンビ。
ベガーズたちの入場は、やはり初演に比べて大人し目。
初演、彼らはほんとに騒々しく、そしてマッコルリは盗みをやらかしたり暴れていたものね。
多少の違いはあっても、やっぱりエキサイティングなこの舞台。
マイ楽になったこの日、なんだかとても惜別の念...どうしたのか私。
初日で千秋楽だから?(意味不明 )
相変わらず吸引力強い舞台です。 観客のエネルギーも吸い取るくらいパワフルな18世紀英国へワープ。
ピーチャムに扮装して登場の橋本さとしの第一印象は...
がぅぁぁ~~(心の中で絶叫)。
めちゃくちゃ格好ええです
泥臭かった高嶋兄のピーチャムに比べ、なんとすっきり洗練されたピーチャム。
こんなに美しくていいのか、橋本ピーチャム。
長身に黒の巻き毛の鬘もお似合いです。 もともとが外人顔だし。
お顔も先週に比べかなりすっきりされた様子...というかハードな舞台なんですよねぇ、どんどん痩せていく出演者たちって。その骨身を削っての熱演がさらに盛り上がりを作るのだけれど♪ (それでも先週まではその前の大阪公演もあったわけで、この1週間でスリム化したっていうことだよね)
そして今回彼に代わってフィルチを演じるのはもってこい原田。
トム→ピーチャム→ウエイター、もっていこい→フィルチ→他、の変身の流れもスムーズで、ベガー劇団が複数の役柄をこなして上手に演出している風も舞台に加わって面白い。
ちょっと明るすぎの原田フィルチ。
橋本フィルチが前回観た時にちっとフィルチを演じるにはごつくなりすぎたかな(大分重量が増えた感あり、バル風な風格付きすぎたか)、という違和感があったので、今回フィルチが若返ったのは歓迎。
あとはもちょっと汚れるか、性格にこそくで柔な感じがあると見ていて面白いかも。
メークの関係もあるのでしょうけれど今回原田くんの顔、数年前の吉野ケーゴくんに似ておりましたよ(『オール・シュック・アップ』の米高校生の時はあんた誰?っていう感じでしたが・笑)。
今回は演出家の意図としてはベガー劇団の作家であるトムが物語りで風刺したかったピーチャムを自身で演じるのが適役ということらしい。
ということは、おのずと今までハモッていたロキットとのコンビも、全体的な存在としての比重的にはピーチャムのほうが大きくなる、ということでしょう。
その点でも今回の橋本ピーチャムはなかなかいいスタート。
あとはもっともっと”お上流”ではないけれど、その狭間の下でも上でもないスノッブな悪がでてくると橋本風がますます輝くのでは、と期待。
再演の2回目の観劇となった今回。
初演との違いは、やはりベガーたちの卑屈さと怒りが性格付けのベースに強調されているという部分が見て取れた。
オープニング入場後すぐ、台本を持って舞台に上がったトムの社会への体を震わさんばかりの怒りの炎が雰囲気でメラメラと伝わってくる。
初演は私たちベガーはがんばってこれを演じきります!毎日底辺でもがんばって生きているのだぞ、という表面的明るさがあったと思う。 そのほうが不自然ではあったが初舞台という緊張のなせる業のようなベガー人生で初めての経験の初々しさも伴っていた。
ただしどちらがよい、ということではないが、再演ではこの底の感情と性質が強調されたことでより展開が充実したのは確か。
初演よりも芝居としての面白味が増したのは、役者たちの役への理解と表現がさらに深まったり作品の全体像が初めてくっきり見え出した、というのと無縁ではないだろう。
罪な仕掛け人、演出家ケアードである♪
ここまでくれば、あと最低でももう一度再々演があってしかるべし、、、
でしょう? (モーリー風に)
今まで映像では2本、この『ベガーズ・オペラ』を観た。
ひとつはピーター・ブルック版でサー・L.オリビエの主演の映画。
もうひとつはロジャー・ダルトリー主演のTV版。
実際映像の作品は、どれも難解、もしくは退屈。
物語の主題までは作品自体が届いていない感じ。
(マクヒース役のダルトリーの女好きさ加減はなかなかの好演。ブルック版のほうは構成がひとひねりしてある。)
私が日本人で英国の歴史が肌についていないというのもあるが、ワールドワイドで観て面白いとは言いがたい『乞食オペラ』。
日生の舞台で観た『ベガーズ・オペラ』が今最高に面白い、乞食オペラでしょう。
集団で生きる人間の生きる熱が伝わってくる作品です。
再演で初めてこの舞台を観る観客が、かなり楽しんでいたのが初演との大きな違いでもありました。
2008/3/21 @日生劇場マチネ
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